実用・二項係数

TL;DR

 \binom{n}{k}

n\k -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4
-4 1 0 0 0 1 -4 10 -20 35
-3 -3 1 0 0 1 -3 6 -10 15
-2 3 -2 1 0 1 -2 3 -4 5
-1 -1 1 -1 1 1 -1 1 -1 1
0 0 0 0 0 1 0 0 0 0
1 0 0 0 0 1 1 0 0 0
2 0 0 0 0 1 2 1 0 0
3 0 0 0 0 1 3 3 1 0
4 0 0 0 0 1 4 6 4 1

主な対象読者

重複組合せ  \def\multichoose#1#2{\left(\kern-.3em\left(\genfrac{}{}{0pt}{}{#1}{#2}\right)\kern-.3em\right)}\multichoose{0}{0} を計算しようとしてやらかしたことがある人.

みんな納得すること

 n \in \mathbb{Z},\, k \in \mathbb{Z}_{\ge0} のとき, \binom{n}{k} = [x^k] (1+x)^n = \frac{n(n-1) \cdots (n-k+1)}{k!} ということでよいと思います.

流儀 1

 k \in \mathbb{Z}_{\lt0} のとき  (1+x)^n k 次の項なんてものはないので, \binom{n}{k} = 0 としてしまうのはありかもしれません.こうすると,二項係数の基本的な性質は以下のようになります:

  •  \binom{n}{k} = \binom{n}{n-k} n \in \mathbb{Z}_{\lt0} では必ずしも成り立たない
  •  \binom{n}{k} = \binom{n-1}{k-1} + \binom{n-1}{k} はすべての  n, k \in \mathbb{Z} で成り立つ (これは  (1+x)^n = (1+x)^{n-1} (1+x) から直ちに従います)

流儀 2

 \multichoose{n}{k} = \binom{n+k-1}{k} \binom{k+n-1}{n-1} にしたいことはしばしばあると思います.これをすると  n, k \in \mathbb{Z}_{\ge0} では  (n, k) = (0, 0) のときだけ  \binom{-1}{-1} になって大変です.確かに  \binom{n}{k} k n-k について対称であってほしい感じがあるので,そういう方向で決めていくと, n \in \mathbb{Z}_{\lt0},\, k \in \mathbb{Z} に対して,

  •  k \ge 0 のとき  \binom{n}{k} = (-1)^k \binom{-n+k-1}{k}
  •  n-k \ge 0 のとき  \binom{n}{k} = (-1)^{n-k} \binom{-k-1}{k}

とするのがよさそうです.間の  n \lt k \lt 0 ですが,全部  0 にすると以下を満たすことがわかり,都合がよさそうです:

  •  \binom{n}{k} = \binom{n}{n-k} n \in \mathbb{Z}_{\lt0} はすべての  n, k \in \mathbb{Z} で成り立つ
  •  \binom{n}{k} = \binom{n-1}{k-1} + \binom{n-1}{k} (n, k) = (0, 0) を除くすべての  n, k \in \mathbb{Z} で成り立つ

 \binom{-1}{-1} = 1 を要請する時点でこの例外はやむを得ません.二項係数の式変形で  \binom{0}{0} \ne \binom{-1}{-1} + \binom{-1}{0} にだけ注意すればよいのは,符号をいちいち気にするよりは楽かもしれません.

※追記 (2021/06/24)  k \binom{n}{k} = n \binom{n-1}{k-1} もすべての  n, k \in \mathbb{Z} で成り立ちます.この式は個人的には  \binom{n}{k} = \frac{n}{k} \binom{n-1}{k-1} の形が覚えやすいです.

お気持ち

 a \in \mathbb{Z}_{\lt0} に対し  \frac{1}{a!} = 0 であると考えることがよくあります (例えば [1] の Chapter 1 の演習問題など).これで  n, k \in \mathbb{Z}_{\ge0} のときは  \binom{n}{k} = \frac{n!}{k! (n-k)!} がある意味正しくなります.

負整数の階乗が分子に来る場合は,分母と打ち消しあって有限の比になるように考えます. \frac{8!}{5!} = 8 \cdot 7 \cdot 6 であるかのように, \frac{(-5)!}{(-8)!} = (-5) \cdot (-6) \cdot (-7) みたいにすると,流儀 2 がこれで上手く説明できます.

ここでは「それっぽい」ことを雰囲気で書きました.ちゃんとやるなら  \binom{n}{k} = \frac{\Gamma(n+1)}{\Gamma(k+1) \Gamma(n-k+1)} によってガンマ関数の特異点以外は  n, k \in \mathbb{C} で定義できて,それを  n \in \mathbb{Z}_{\lt0},\, k \in \mathbb{C} \setminus \mathbb{Z} な点以外で連続になるようにすると,流儀 2 で定めたような値になるようです ([2]).Wolfram 言語の Binomial はそういう複素関数として計算してくれます.

参考文献

[1] Stanley, Richard P. "Enumerative Combinatorics Volume 1 second edition." Cambridge studies in advanced mathematics (2011).

[2] Weisstein, Eric W. "Binomial Coefficient." From MathWorld--A Wolfram Web Resource. https://mathworld.wolfram.com/BinomialCoefficient.html